ほっきょんのブログ

ギャルゲレビュー用。★★★☆以上で名作

ギャルゲレビューその17;Kanon

f:id:hokkyo:20190115165847j:plain

どうもこんばんわ。ほっきょんです。

今回紹介する作品はコチラ。

f:id:hokkyo:20190118210900j:plain

オススメ度:★★☆☆(良質なノベルゲー)

難易度:☆☆☆☆(難易度って概念あるのか?)

雰囲気:やや重い

プレイ時間:30時間

プラットフォーム;PC, iOS, Android, PS2, PSPiOS版をプレイ)

 

www.youtube.com

 

概要

Kanon(カノン)は、ゲームブランド・Keyが1作目に制作した恋愛アドベンチャーゲーム

家庭の事情により北国の叔母の家に居候することになった相沢祐一。7年前まではよく訪れていたにも関わらず、彼には当時のことが思い出せずにいた。そんな中、彼はそこで出会った5人の少女達と交流を深め、幼い頃の大切な記憶を取り戻していく。

 

注)今回はガッツリネタバレ有 

 

 

 

ヒロイン&各√レビュー(筆者の攻略順)

水瀬名雪(みなせ なゆき)

f:id:hokkyo:20190115165547j:plain

初登場時の印象;押しが弱い同居人は空気キャラが相場(眼鏡クイクイ

攻略後の印象;こういう本当の意味で優しい女の子すき…ほんとすき…

『うにゅぅ』主人公の従姉妹で、母親と二人暮らし。

おっとり系の女子で陸上部に所属している。朝に弱い。ちなみにガイジではない

 

彼女のストーリーでは主人公(祐一)が忘れていた七年前の記憶を少しずつ思い出しながら、同時に彼女の優しさを思い出していく。

個人的に好きなエピソードは、祐一が名雪20円のビー玉をプレゼントするシーンで、祐一がプレゼントしてくれたものはなんでも嬉しいという彼女の笑顔から七年前から変わらずずっと祐一のことを想っているんだなと伝わってきてドキドキした。

でももっと良かった場面は、心無い生徒によって壊されてしまった雪うさぎを名雪が修復し、無くなってしまった雪うさぎの目に前述のビー玉をつけてあげるシーンである。祐一は七年前に名雪が作った雪うさぎを壊してしまい名雪を傷つけてしまった過去がある『祐一がくれたビー玉この子の目にしても良い?』と聞いて、祐一が承諾したあとの名雪の笑顔は、彼女の過去の心の傷が癒えたように感じて本当に素敵だった。

f:id:hokkyo:20190117014837j:plain

かわいい(かわいい)

終盤で祐一が七年前に名雪と交わして居た約束を守れなかったことを思い出し、謝罪するシーンがある。『イチゴパフェ7個で許してあげる。私もまだ祐一のこと好きみたいだから』という彼女のセリフが彼女の優しさと人間らしさを上手く表現できていて良いセリフだなと思った。また前述のような出来事があったにも関わらず、中々記憶を思い出さない主人公に対して、無理に思い出さなくても良いというスタンスで接し続ける姿も彼女の優しさが伝わってきて彼女のことを好きになれた。

学校の帰り道に手を繋ぐシーンとか、恋人同士になってからパジャマを見られるのが恥ずかしがる姿とか、愛の言葉を目覚まし時計に封じ込めるシーンとか、魅力が無限に湧いてくる良いヒロインだった。

 

ただラストで名雪の母親が交通事故に遭遇するのだが、このエピソードは不要だったと思う。何事もなくヒロインと結ばれてしまって終わるに終われなくなってしまったことと、仕様上各ヒロインごとに奇跡を起こす必要があるため、無理やり不幸を起こして奇跡を祈らせるよう脚本家に作らされたエピソードだと感じた。あの程度じゃ七年間もの間拒絶された名雪の気持ちは理解できない。

f:id:hokkyo:20190118024200j:plain

名雪の七年前の回想シーン

ほっきょんの推しは彼女。こういうタイプの女の子が普通に異性として好きなのもあるけど、従兄妹同士の肉体関係って近親相関っぽくて普通に興奮する

主人公が寝てる名雪を叩いて起こすシーンが多いが、とりあえず叩く暴力はなんの意図もないただの暴力で見ていて名雪が可哀想だなと思った。

原作プレイ後にアニメを見たが、キャラクターの印象と声のイメージが違う。でもボイス付きで『嘘つき』と言われると反応してしまう。 

 

 

 

美坂栞(みさか しおり)

f:id:hokkyo:20190117010040j:plain

初登場時の印象;誰やこいつ…

攻略後の印象;そう…(無関心)

『そういうこと言う人嫌いです』。主人公の一学年下の女の子。

病気で学校を長期休暇している。アイスクリームが好き。ちなみにガイジ

 

栞のストーリーでは、主人公が授業に中学校の中庭にいる栞を見つけ、昼休みを共に過ごしながら仲良くなっていく。そして彼女自身の病気や、実姉である香里との関係性と向き合っていく。

名雪の良い所を100個言えと言われたら多分余裕だが、栞の良いところを3個言えと言われても言葉に困るくらい魅力が見えてこなかった恋愛におけるデートは男女の魅力を最大限に引き出す場であるように思うが、その殆どが商店街でのデートで魅力を引き出すためのバリュエーションが少ない。その上に何度かデートをして伝わってきた彼女のバックグラウンドは外の世界を殆ど知らないという事実だけ。これではただ仲良くなるプロセスとしてそれらしい恋愛の要素であるデートを選んだだけで何も面白くない。

f:id:hokkyo:20190117105720j:plain

ちなみに公園でもデートする

栞の√では姉妹愛と病気の少女の儚さを描いているが、祐一のマインドが追いついてきてない。栞目線で祐一を好きになる理由は伝わってくるのだが、祐一目線で出会って10日程度で栞を好きになる理由が伝わってこない。彼目線、栞のどの部分が魅力的で、どの部分に惹かれてなにをしてあげたかったのか俺にはわからない。だから恋人になるシーンで『一週間だけは普通の女の子として接してください』と約束を願う栞に対して祐一は強い決心を持って了承するのだが、多分その決心は筆者でも出来るくらい浅い

f:id:hokkyo:20190117110149j:plain

こいつは栞の姉ちゃん

栞のレビューを書いていたら一本分の映画が終わってしまったので良い加減終わらせたいのだが、未だに必要だったか疑問に思っている姉の存在について最後に言及したい。

栞には祐一と同じクラスに在籍する姉が存在するが、『私には妹が存在しない』と妹のことを頑なに認めない。認めないことも良く分からんのだが、最終盤になって急に妹の存在を認めだすのも良く分からない。分からなすぎて病弱な女の子とのシナリオだけで良かったんじゃないのと考えてしまった。

 

実際なんの病気だったのかとか、急に元気になるの奇跡じゃなくてご都合ムーブとか、クソ寒い中アイス食べるのガイジかと思ったけど伏線だった話とか他にも言いたいことあったんだけど語ってると永遠に終わらんからこの辺で。

 

 

沢渡真琴(さわたり まこと)

f:id:hokkyo:20190117010051j:plain

初登場時の印象;多分ガイジだと思うんですけど(名推理)

攻略後の印象;真琴…やっぱりガイジじゃないか(涙)

『あぅー』。主人公に対する憎しみの感情だけを残した記憶喪失の女の子。

漫画と肉まんとイタズラが大好き。ちなみにガイジ

 

真琴のストーリーでは名雪の家に居候することになった真琴の正体を探りながら、日に日に衰弱していく彼女と向き合う。

彼女の正体は祐一が七年前に丘で見つけて可愛がっていた狐で、もう一度祐一に会いたいという想いから狐が人に化けて出てきたというもの。

筆者は物語の中で脚本家の意図が見えてこないような話が好きなので、ファンタジー的な要素を取り入れられると物語の正当性を判断することができず結構困ってしまう。あと狐の妖力について語り出す天野みたいなキャラクターは別に登場しても構わないのだがもう少し丁寧に描写して欲しかったなあ。

f:id:hokkyo:20190118011946j:plain

天野は右のキャラクター

とはいえ前述のマイナスポイントを抜きにしても真琴のストーリーは感動できるモノだった。

振り返ってみると真琴のストーリーは非常に悲しいお話である。真琴は人間に化ける時に記憶を失い、祐一は七年前の記憶を覚えていない。そのため再会を果たした筈なのに互いにすれ違ってしまう。そのうえ真琴は捨てられた時の祐一の記憶しか持ち合わせていないため、祐一に対して憎しみの感情しか持っていない。だから、本当は一緒に居たいだけなのに、真琴はそのことを伝えることをできず、言葉すら交わせなくなった後に漸く願い事が叶うのは本当に悲しい。作中で真琴に音読する少女漫画『恋はいつだって突然に』に描かれるラストシーンが彼女の理想像だと考えると切ない気持ちになる。

 

最初見たときコイツは間違いなくガイジと鼻で笑っていたが、終盤に生命力が弱まっていき当たり前の生活が出来なくなる真琴を見たら全く笑えなくなって辛かった

 

 

川澄舞(かわすみ まい)

f:id:hokkyo:20190117034207p:plain

初登場時の印象;違うジャンルのゲームキャラ出てきたんだが

攻略後の印象;ww????WWWwwwW??WWWW

『嫌いじゃない』。夜の学校で魔物と戦う上級生の女の子。

クールな性格で、牛丼が好き。ちなみにアスぺ

 

学校で魔物と戦うミステリアスな女の子。魔物の正体は舞自身が作り出した分身で、十年前この街から離れようとする祐一を繫ぎ止めるために生み出したものであった。ぶっちゃけよく分からんかったし、分かる気力も無かった。

対して印象に残る場面も少ないのだが、普段から話しかけても何も返事をしない彼女に見かねた祐一が胸を触ろうとするのだが、胸を触られるのが嫌で祐一の喉元に剣先を突きつけるシーンは個人的に好き。普段食べて戦って無口なだけの女の子が、女の子らしい一面もあるんだと分かってちょっとだけ好きになれた。

 

幼少期に味わった寂しさ、ありあまる大きな力、不器用だけど本当は優しい女の子の魅力を描写したかったのは伝わるのだが、もっとやりようがあったような気がする。これじゃブリーチじゃん。

 

 

月宮あゆ(つきみや あゆ)

f:id:hokkyo:20190117010105j:plain

初登場時の印象;こいつは間違いなくガイ(確信)

攻略後の印象;そっかぁ〜〜〜〜〜〜

うぐぅ。メインヒロイン。商店街で無くしてしまった大事なものを探す女の子。

たい焼きが大好きで犯罪も辞さないちなみにガイジ

 

彼女の正体はいわゆる生き霊で、本体は病院で昏睡状態にある。七年前に祐一はあゆと仲良しであったが、事故で祐一はあゆが死んだものと思い込んでいた。そのため祐一は七年前の記憶を閉ざし、雪の降る街へ行くことも拒んでいた。彼女が探していたものは、かつて祐一があゆにプレゼントしたなんでも願い事が叶う天使の人形。叶えることができる三つの願い事のうち、最後の一つの願いを再会した時に叶えると約束していた。

f:id:hokkyo:20190118172733j:plain

祐一があゆにプレゼントした天使の人形

あゆの√では、あゆとの関わりを通じながら祐一が七年前にあゆと遊んでいた記憶、交わした約束を思い出していく。…のだがどうも印象に残っていない。

七年前の出来事は濃密に描かれているのだが、再会してからのエピソードに真新しいものがなく、祐一は過去の思い出だけで好きになっているのではないかと考えてしまった。何故こんなことを言っているのかというと、どうも彼女の印象が薄いからである。

たい焼きを巡ってトラブルを起こしたり、映画を観に行ったり、自宅のベランダから夜空を眺めたりしているのだが、結局祐一が色々思い出しているだけで現在のエピソードからあゆという少女の魅力を掬うことができていないように感じた。

f:id:hokkyo:20190118173510j:plain

彼女以外の√に入ったときのラストシーン。探し物が見つかったからもう会えないという。

あゆという女性に対して魅力的なものは殆ど何も感じず、ただ前述の四人のヒロイン達のエピソードで奇跡が起こるのは彼女が絡んでいたんだなという納得感しかなかった。

何故祐一があゆに捧げた人形で他のヒロイン達に関連した奇跡が起こるのかについて若干疑問に思ったが、他の考察記事の中にあった『祐一が笑顔でいられることを願ったから』が一番しっくりきた。

 

 

総評

『ドラマにおいて命は賭け損』

これは個人的に考えているドラマに対する価値観の一つで、物語において人の生死を賭ける行為を昇華させる事は非常に難しいし、面白くなりにくいということを指している。

死んでバッドエンドになるのは物語として消化不良であるし、生きてハッピーエンドは当たり前すぎてなんの感動も得ることができない。どっちに転んでも心にモヤモヤが残るのでドラマではできるだけ人の生死は見たくないと思ってる。

 

Kanonにおける各ヒロインのストーリーは、主人公にとって重要な人物の誰かが死ぬ、あるいはそれに近い状態に陥るが奇跡の力で幸せになる。というのが大筋である。

物語における最高のスパイスは絶望的な状態から如何に劇的な奇跡を起こすかと考えている。そのため奇跡の力で幸せになること自体は別に構わないし、大いにすべきだと考えている。しかし本作品は奇跡が発生する事実が読み手側に担保されており、最後の方で幸せになってもやっぱりそうなんだくらいの感情しか得ることができなかった。だからもう少し様々な登場人物を不幸に叩き落としても良いのにという気持ちが残った。

とはいえ、名雪√での彼女自身の魅力、真琴√での奇跡が起こるまでの辛さは非常によく、楽しみながらプレイすることができた作品だった。

 

Kanon誰かの奇跡を起こすと他の誰かが不幸になる悲劇と葛藤のドラマだという意見があるが、個人的にはそう思わない。何故なら貴女にとっての不幸は私にとっての不幸ではないから。

 

以上。